内田カンパニーの短歌教室【夏期の添削①】
2024.09.10
毎年恒例、中1生徒の夏期短歌課題。年々、短歌や俳句のリズムに慣れていない子どもたちが増えてきているように感じます。指折りかぞえないと五七のリズムがつかめなかったり、いわゆる拗音や促音(ゃゅょ・っ)がうまく数えられなかったり。自分で短歌を考えることや友だちの短歌を分析することで、言葉のリズム感や表現の楽しみを是非知ってほしいと思います。今回は授業で扱ったいくつかの作品をご紹介します。まだまだ中1なので作品の出来ではなく、言葉の選び方や素直な心を楽しんでいただけると幸いです。それでは、いってみましょう。
まずは、ペンネーム「ぽん」さん。
ひまわりの 向く先は何か 見上げると まぶしい光に 一直線
中学1年生らしい、真っ直ぐな短歌ですね。ひまわりが太陽の方向を向いて咲くことを自らの目で確かめたのでしょう。「見上げると」の表現から高低差もイメージできて、動作主がまだ小さい子であることも想像できます。ただ、もったいないのは、二句四句の字余りと結句の字足らず。五七五七七のリズムを崩すにはそれ相当の理由が必要です。破調をすることでの『効果』がないのなら、まずはリズムを守ったほうがよいでしょう。
続いて、ペンネーム「全速力(フルスピード)吉崎」さんの作品。
夏休み 潮風かおる 海の音 スイカをかじった 夏の思い出
こちらは、五七のリズムはOK。ただ、ちょっと無駄が多いですね。夏休み=夏の思い出、潮風=海など同じイメージを並べてしまっています。どちらかを削ることでもっと多くのことが伝えられそうです。しかし、言葉選びには目を瞠るものがありますね。「潮風かおる」はどう考えたって男前(イケメン)。スイカも食べたじゃなくて、かじった。いいじゃない。だったら「潮風かおる」「スイカをかじる」で並べると二句と四句でリズムが揃います。また、言葉のセンスはペンネームにも表れています。全速力(フルスピード)吉崎。笑。天才。ここで、先ほどの字余りについても説明できそう。例えば初句に、「全速力」この6音は、5音を超えるその勢いや速さの表現として認められます。
ペンネーム「父のやる気についていけない私」さんの作品
暑すぎて 中止になった バーベキュー 父が悲しみ 私喜ぶ😀
一読したとき、恐ろしさを感じました。最後に絵文字😀がついているからではありません。皆さんはこの「私」の悪意に気づきますか?そんな発問をしたら、何人か手を挙げてくれました。指名をすると「父が」との返答。その通りです。そこに気づけるのは素晴らしい感覚ですね。さすがリンスタ生。普通はBBQが中止になって「父は悲しみ私は喜ぶ」のです。私が日焼けをしたくないのか、お肉が苦手なのかはわかりませんが。でも今回は「父が悲しみ私は喜ぶ」のです。BBQが中止になり、ガッカリしている父を見て喜ぶ中1女子!なんて良くない子なんでしょう!しかもそれを絵文字😀で誤魔化すなんて!
ペンネーム「もね」さん。
いとことね いっしょに花火 楽しみだ おばあちゃんちで いっしょに遊ぼ
最後の作品は、クラスが一番どよめいたものです。「いとことね いっしょに花火 楽しみだ おばあちゃんちで いっしょに遊ぼ」うん。わかる。でも、中1にしては、言葉が簡単な気がしない?「いとことね」の「ね」もそうだし、「いっしょに」と二回言うところも。すると、この遊びたがっている(たぶん)少女は何者?なんでこんなに「いっしょに」遊びたかっているのか。そして、誰に話しかけているのか。もしかしたら、それはおばあちゃんちの近くの川で3年前に亡くなった、キャー!とまさに夏の怪談話のように。気付けばペンネーム、私「もね」。。私のことも忘れないでね。キャー恐ろしい!作者は全然違うって顔をしていましたが笑、言葉の雰囲気だけでこんなにイメージが広がることがわかってくれたと思います。
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