内田幸仁(うちだゆきひと)

【夏のたわむれ③】

2023.09.27

前回【夏のたわむれ②】の続き。内容や表現を「転用」することで、生徒たちに指導をしています。

⑥ふうりんが 氷のように ひんやりと 涼しい音を 鳴らしてる
⇒風鈴の 音色における 涼しさを 感じられない 妹はガキ

※夏を表すものとして、風鈴を選んでくれました。ただ、このままだと「風鈴」=「音を鳴らす」=「涼しい」=「ひんやり」=「氷のよう」とひねりがありません。実際の風鈴は温度自体が下がるわけではありません。でも、その風情に気付くことができた僕は大人だ。

⑦炎天下 ラケット振るたび 伝う汗 キラキラ輝く 努力の証
⇒炎天下 ラケット振るたび 伝う汗 キラキラ輝く 努力の私

※【夏のたわむれ①】の投票結果のように、ほぼ完成形に近い歌です。大きな太陽と小さな汗の視点、「伝う」という表現などすばらしい作品と言えます。ただちょっと、優等生すぎる感じがするかな?1文字2音だけ変えて、中学生の本音っぽい感じを表現しました。

⑧友だちと プールに行って 遊ぶとき 浮き輪があると 皆奪い合う
⇒浮き輪さえ 遊び道具に してしまう 中学1年 太陽の下

※一見平凡に見えて、詠む人に「景」を浮かばせることのできる短歌です。空に輝くお日様、友達と水を掛けあう様子、周りの喧騒。書かれていないけど、イメージが浮かびますね。この輝く日々を大切にしてほしいという願いを込めて、「転用」しました。

⑨全身に まだ熱を持つ トモダチと 夏の夕暮れ 夢を語る目
⇒公園は 遊ぶところじゃ なくなって 夢や想いを 語り合う場所

※実は、元も自分の作品です。「全身にまだ熱を持つ」で部活だけでなく、映画を見た後の興奮や喧嘩の後の高ぶりなどをイメージしてほしかった。その想いの高ぶりと開放感のある夏にのせられ、本音を話してしまう。そんな記憶にはいつも夕暮れの公園が浮かび上がる。

⑩晴れ舞台 成果を果たす 練習の 一意専心 バスケ魂
⇒履きなれた バッシュの音が 心地よい 一意専心 休みはないぜ

※一読して、おそらくチームの合言葉である「一意専心」が中心の短歌だと感じました。中学生になって、早や4か月。新しく始めた部活にも慣れてきた頃。格好良かった中3の先輩は引退し、空いたポジションはオレが取る。体育館が浮かんでくれれば上出来です。

 

と、ここまで「夏のたわむれ①~③」として真剣に短歌で遊んでみました。真剣に遊び、真剣に言葉の力を身につける。こういった機会を多く提供できる「本物の国語」を伝えています。それにしても、中学1年生の夏はキラキラと輝いていますね。さて、こちらも負けずにいつまでも輝く「愉快な大人」を目指します。

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