【初春~晩春 生徒編②】
2023.05.26
続いても、新中学1年生。「奏」くんの作品です。
新学期 慣れない環境 続いている 小学校が とても恋しい
こちらも、はじめての中学、はじめての制服、はじめての部活。慣れない環境にもどかしく感じる今の気持ちを素直に詠んでくれた短歌です。ポイントは環境かな。奏くんが「小学生」ではなく、「小学校」という環境=場所を表す言葉を自然と選択したところです。中学校に通学していて、小学校がとても恋しいけれど、自分が中学生であることは疑いようのない事実。だからこそ、過去を懐かしく思う。新学期ブルーなんて言われる現象に近いかもしれません。もう一つ秀逸なのは、結句の「恋しい」。「思い出す」でも「懐かしい」でも「戻りたい」でもない、ただただ恋しい。この言葉一つで惹かれている心の強さが表現できています。なかなか新中学1年生では出ない言葉ですよ。素晴らしい。
さて、ここからはセンスを磨くお勉強です。三句「続いている」をどう感じますか。
短歌の形式に合わせ、5音で「続いてる」と口語形式で詠むべきか、あくまでも正しい日本語で「続いている」と詠むべきか。
それぞれ一長一短があります。「続いてる」のほうが、全体のリズムは圧倒的に良くなります。(※恥ずかしがらずに声に出して読んでみましょう。)でも、「続いている」とすることで、中学校の環境への反発心や自分ではどうにもできないことの諦め、そして何よりこの環境がこのあとずっと続くことが表現できるかもしれません。
たった1文字変わるだけで印象が変わる。その1文字に悩むことは短歌を作る大きな楽しみであり、言葉のセンスを磨く練習にもなります。「続いてる」「続いている」皆さんなら、どちらを選択しますか。
【内田先生からの返歌】
4月から 黒ランドセル 脱ぎ捨てて 背中に風が 吹き抜けていく
⇒ただの新学期ではなく、中学への入学。今まで背負っていた重いランドセルはもうない。身軽になった気もするけど、今度は自分自身で、姿勢よくしていかなきゃならない。もうランドセル(小学校)には頼れない、大人への第一歩の不安。そんな気持ちの代弁です。
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