白井亨(しらいとおる)

~群馬県高崎市 上州の交通結節点編~

2024.07.05

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

前回に引き続き、群馬県の二大都市、前橋市と高崎市について書いていきます。前回は、前橋市に焦点を当てた内容でしたが、今回は高崎市に注目してみようと思います。

前橋と比較して高崎が圧倒的に優位に立っているのが交通、特に鉄道です。
下の2枚の写真は、国土地理院のHPから作成した高崎駅(上)と前橋駅(下)の様子で、縮尺も写っている範囲の大きさも同じにしてあります。高崎駅はターミナル駅らしく広い敷地を持っていて、周辺には大きな建物も多いことがわかります。それに対して、前橋駅は敷地もそれほど大きくなく、周囲にもあまり目立った建物はありません。高崎駅は新幹線まで含めれば14番線まで、前橋駅は3番線までですから、その規模は比較になりません。

高崎駅は、新潟へ向かう上越新幹線と長野や金沢に向かう北陸新幹線の分岐駅です。2つの新幹線が利用できる高崎駅からは、昼間の時間でも1時間に3本の東京方面行が出発していきます。新幹線を利用すれば1時間弱で東京駅に到着しますので、新幹線通勤をしている方もそれなりの数がいるのでしょうね。

在来線にも多くの東京方面行があり、こちらは2時間弱で東京に行くことができます。さすがに新幹線と比べると時間はかかりますが、湘南新宿ラインへの直通電車に乗れば新宿や渋谷にも乗り換えなしで行くことができます。湘南新宿ライン、上野東京ラインともに、神奈川県や静岡県まで乗り換えなしで行かれる列車もあります。横浜までは2時間半程度ですので、新幹線を使うと乗り換えが面倒だと思う人は利用するかもしれないですね。いずれにしても、東京方面にはいくつかの選択肢があり、どれもある程度の本数が設定されているということがわかります。
その他にも、前橋や桐生に向かう両毛線や草津方面に向かう吾妻線の列車も高崎を始発としています。このように、高崎駅はまちがいなく群馬県一のターミナル駅となっているのです。

新幹線が開通する前も、高崎駅は新潟方面へ向かう上越線と、長野方面へ向かう信越線の分岐点となっており、新潟行き、長野行き、金沢行き、秋田行きといった特急電車が数多く発着していました。

下の写真は高崎駅の西口ですが、立派な駅ビルのなかには飲食店や土産店などが数多くあり、駅前のバスターミナルには多くのバスが発着していました。駅構内の混雑も含め、まさに群馬県の拠点駅をいった感じです。

一方、前橋駅で利用できるのはJR両毛線のみ。少し離れたところに上毛電鉄の中央前橋駅がありますが、どちらの駅も日中は1時間に2本程度の列車が走っているだけです。また、他の関東地方の県庁所在地駅からは数多くの東京直通電車が走っていますが、前橋駅からの東京直通電車は朝と夕方に数本ずつあるだけです。

下の写真は前橋駅の北口ですが、なんとなくガランとしている感じですよね。県庁所在地の駅らしく広いバスターミナルを備えているのが、余計に人の少なさを感じさせます。高崎駅のような駅ビルも設置されていませんし、駅の構内にはわずかに数軒の店があるのみです。このようなタイプの駅は、東京郊外の私鉄の駅などでも見かけますよね。何も知らない人が2枚の写真を見せられて、「どちらが県庁所在地?」と聞かれたら、まちがいなく高崎駅のほうを選ぶことでしょう。

前橋駅は唯一の「JR特急列車が発着しない駅」として知られています。鉄道自体がない沖縄県を除く日本全国の県庁所在地駅では、新幹線が利用できたり、新幹線が通っていないところでも在来線の特急列車が利用できたりするものですが、前橋駅にはそのどちらもありません。

高崎駅と前橋駅の間はわずか4駅、距離にして約10㎞しか離れていないのに、なぜこんな差がついてしまったのでしょうか? せめて2つの駅の両方を通るように線路を敷くことはできなかったのでしょうか?

それでは、いつものように地図を使ってそれを確かめていきましょう。

下の地図を見てください。
高崎駅は、新潟方面と長野方面の分岐駅ですが、これを前橋駅にするとどうなるでしょう?
高崎駅の西の方角に進むと碓氷峠があり、その先は長野県に入ります。昔の中山道もこのルートを通っていました。もし、前橋駅を経由したとすると、高崎駅からは一度北東方向に向かい、そこからほぼUターンをするような形で西に向かうことになり、前橋経由で長野県方面に向かうのはかなり遠回りになりますね。長野方面に向かうことだけを考えると、分岐点は高崎駅に置くしかなさそうです。

では、北の新潟方面はどうでしょうか。前橋駅を通って新潟方面に向かうことはできないのでしょうか?

下の地図を見てもわかるように、北の方角には赤城山と榛名山があります。新潟方面に向かうには、この2つの山の間を抜けていくしかありません。もし、前橋駅を経由して北に向かった場合はどうでしょう。前橋駅の北には赤城山があり、その裾野が南の前橋駅のほうへ続いています。坂に弱い鉄道がここを通ることは難しそうです。そうすると、高崎駅から前橋駅を通って北へ向かうには、一度北東へ向かった上で、また北西に向かうような形になります。やはりこちらも遠回りになってしまいます。でも、長野方面とは異なり、これくらいの遠回りならば何とかなりそうな気もしますね。

実は、高崎駅と前橋駅の間には、もう1つ障害になるものがあるのです。

下の地図を見てください。高崎駅と前橋駅の間には利根川が流れています。前述した通り、高崎駅から北東方向に進んで前橋駅に着くと、今度は北西方向に進路を変えなければなりません。高崎駅から前橋駅に向かうときに1回、さらに新潟方面に向かうときに1回、合計2回も利根川を越えなければならないことになります。

利根川のような大きな川に橋を架けるというのは、当時の技術では困難な工事になります。地図を見ても、いったん東の方に向かった線路が、利根川を前にして西へカーブしていることがわかりますね。ただ、この迂回はせめてもの前橋への気づかいだと思うのです。このようなルートにすることで、少しでも前橋の市街地に近いところを通るようにしたのでしょう。結局、前橋駅は幹線から外れた少し寂しい駅になってしまったのです。

高崎駅の周辺には、高崎アリーナ、高崎芸術劇場、Gメッセなど、大規模な集客施設があり、市役所や商業施設も駅から近いところにあります。前橋の市街地は、前橋駅の北1㎞くらいのところにあり、市役所や県庁は2㎞弱離れたところにあります。こういう町の成り立ちの違いも、2つの駅のイメージに反映されているのでしょうね。高崎市と前橋市、この2つの都市は、駅周辺の様子ほどの差が付く存在ではないようです。

利根川の手前には新前橋駅が設けられ、この駅と前橋駅の間には、群馬県庁などを経由するバス路線が設定されています。バスの運行本数からも、ある程度の需要があることが想像されます。高崎が賑わっているのはまちがいないのですが、前橋も「何もない」と言われるところではないと、今回訪れてみて確認できたのです。

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みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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