白井亨(しらいとおる)

~千葉県銚子市 銚子電鉄全駅散歩編~

2024.05.24

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

日本一の水揚げ量を誇る漁港の町として知られる千葉県銚子市に、銚子電鉄という小さな鉄道があります。下の地図のように、総武本線の終点銚子駅と、漁港の町外川駅の間の6.4km20分余りで結んでいます。  

この銚子電鉄、これまで何度か経営危機に見舞われたことがあり、現在も鉄道の収入をぬれ煎餅の売り上げが支えているというとてもユニークな鉄道です。これまでも何度か利用したことがあるのですが、「たった6.4㎞ならば歩けるのでは? しかも海沿いだから険しい道はなさそうだし…」と思い、このブログのタイトルらしく、散歩しながらすべての駅を巡ってみようと思い立ったのです。

さて、スタートは銚子駅。JRの電車を降りてそのまま進めば銚子電鉄の乗り場があるのですが、今日は一度改札を出ます。下の地図には、駅の位置も記してありますので、こちらを見ながら読み進めていくとよいでしょう。

1つめの仲ノ町なかのちょう駅までは約500mしかなく、あっという間に着いてしまいました。ここには電車の車庫があるため、下の写真のように何本かの電車が留置されていました。電車の背後にあるのは、これも銚子の名産品となっている醬油工場です。銚子電鉄の大きな収入源となっているぬれ煎餅も、この醤油があってこその商品ですよね。駅の周辺では、なんとなく醤油の香りが漂っているように感じます。昔は線路が工場内まで敷かれており、ここから鉄道を使って日本各地に出荷されていたそうです。

2つめの観音かんのん駅までは銚子の市街地で、ほぼ線路に沿って歩くことができます。電車の本数もそれほど多くはないので、このあたりまでなら次の電車を待つよりも歩いたほうが早いかもしれません。この観音駅は、たい焼き屋さんが併設されていることでも知られています。もちろん、たい焼きも銚子電鉄の貴重な収入源です。

観音駅からその次の本銚子もとちょうし駅までは、線路に沿った道がなくなります。
先ほどの地図をもう一度見てください。この2つの駅の間には高低差があることがわかるでしょうか。電車はそれほど急な坂を上ることはできないので緩やかな坂道になるようにつくられていますが、道路のほうは容赦なく坂を上っていきます。急な坂を上って、さらに坂を下ってようやく本銚子駅にたどり着きました。前述の2駅と間の距離はそれほど変わらないのですが、とても時間がかかりました。海沿いだから険しい道はないだろうという予想は完全に外れてしまい、歩こうと思ったことをちょっと後悔した区間です。

でも、こんなに海が近いのに、なぜこんな起伏のある地形になっているんでしょうね?

この高低差の理由を調べてみたところ、もともと銚子は陸地とは離れた島だったとのこと。それが、利根川が運んできた土砂によってつながり、現在のような地形になったそうです。観音駅までは土砂が堆積してできた平地で、その先はもともとの島の部分だったので標高が高くなっているわけですね。

次の笠上黒生かさがみくろはえ駅までは少し距離がありますが、ほぼ線路に沿って歩いて行かれます。下の写真が笠上黒生駅ですが、何か気づくことはありませんか?
右上の看板に書かれている駅名と、左奥の建物に書かれている文字が違いますね。右の看板は「髪毛黒生」となっているんです。実はこれも銚子電鉄の増収策の1つなんです。これは、ネーミングライツといって、企業などが広告として駅に愛称名をつける権利を得るかわりに、銚子電鉄がその権利料を受け取るというものです。このほかの銚子電鉄の駅にも色々な愛称がついているんですよ。ちなみに、笠上黒生駅の命名権を得たのは、その名称からもわかるようにヘアケア商品の会社だそうです。 

この次の西海鹿島にしあしかじま駅、さらにその次の海鹿島あしかじま駅までは、台地上にある住宅や畑のなかを進んでいきます。
さて、海鹿島駅を出ると、下の地図でわかるように線路に沿った道がなくなってしまいます。矢印で示したようにひたすら何もない道を進み、少し坂を下ってたどり着いたのが君ヶ浜きみがはま駅です。この区間も畑と住宅の風景が続いており、今回の歩きのなかで最も長~く感じたところです。
さて、ようやくたどり着いた君ヶ浜駅ですが、地図を見るとこのあたりの標高は少し低くなっていることがわかります。もしかすると、今歩いてきた部分とその南の部分は、かつては別の島だったのかもしれないですね。

次の駅に向かうには、先ほどの坂を上って元の道に戻るほうが近いのですが、なんだか引き返すのが億劫になり、そのまま東へ進んで海沿いに出て犬吠埼いぬぼうさきを目指すことにしました。

犬吠埼といえば、元旦の初日の出が国内でいちばん早く見られる場所として有名ですね。
ところで、犬吠埼の「埼」の字ですが、これは誤字ではありません。一般的に岬などの地名には「崎」の字が使われていますよね。同じ千葉県内でも、最南端の野島崎は「崎」の字を使っています。
気になって調べてみたところ、「崎」は山がそのまま海に突き出たところ、「埼」は木の生えていない崖が海に突き出たところという意味があるらしいですね。確かに、犬吠埼の先は崖になっています。 

犬吠埼は有名観光地なのでお店なども多数あり、ここで少し休憩することができました。さすがに灯台に上る元気はありませんでしたけどね💦

さて、犬吠埼から犬吠駅に戻って、いよいよ銚子電鉄最後の1駅区間になります。

道は線路から少し離れて並行していて、緩く下っている感じの道です。周囲は畑と民家で、歩いていて特に興味深いものはありませんでしたが、最後の1駅だったこともあって足取りは軽やか。たどり着いた終点の外川とかわ駅は下の写真のような何とも味わい深い佇まいの駅でした。

ここまで、犬吠埼での休憩を入れて3時間余り。思っていたよりは大変な道のりでしたが、楽しく散歩することができました。でも、途中であんまり電車が走っているのは見なかったなぁ…。1時間に1本は走っているはずなんですけど、それだけ線路沿いの道が少なかったということでしょうかね。

外川駅の先は急な下り坂になっていて、その先には外川漁港があります。この漁港は、江戸時代初期に開かれた歴史のある港で、かつてはとても栄えていたそうです。港へは、下の写真のような坂道が伸びていて、地図をみるとこのような道が何本か設けられているのがわかります。
かつてはこの坂を使って大量の鰯が運ばれ、干鰯という肥料に加工されて各地に販売されていました。この干鰯の販売で大儲けをした人もいたそうですが、現在のひなびた町の様子からそれを想像することは難しいですね。

外川駅からは銚子電鉄に乗って、銚子駅まで戻りました。経営の苦しい鉄道ですから、少しでも売り上げに貢献しないとね😄 もちろん、ぬれ煎餅もおみやげに買いましたよ。

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。


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