~千葉県船橋市 地図のなかの不思議な形編~
2024.02.16
みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。
私は地図を見るのが好きなのですが、ときどき「なんだこりゃ?」と思うような不思議な形を見つけることがあります。例えば下の地図なのですが、丸で囲んだところの道が、不自然に〝く〟の字型に曲がっています。
もちろん、行かれる範囲のところは実際に訪問して確かめてみるのですが、地理院地図のさまざまな機能を使うと、その「?」が解決することもあります。下の地図は、上の地図と同じ場所の標高を表したものです。これを見れば一目瞭然ですね。この場所は台地と低地の境目の崖なんです。もしまっすぐに道を通したらとんでもない急勾配の坂になってしまいますよね。そこで道をこのように曲げて勾配を緩和しているのです。
さて、千葉県船橋市の地図を見ると、算数の問題で出てくるような図形を見つけることができます。
さて、下の地図を見てください。
青い点線は、西船橋駅から北に向かうJR武蔵野線です。地図中ではわかりやすくするために赤い線で補足をしてありますが、武蔵野線の西側に楕円形、東側に円形という、おそらく人為的につくられたのだと思える図形が確認できるのです。
西側の楕円形があるところは地図を見ればすぐにわかります。この楕円形は、100年近くの歴史を持つ中山競馬場です。小さい文字ですが、地図中にもはっきりと書いてあります。ところが、右側の円形のところには地名が書かれているだけで、なぜこのような形になっているのかを地図から読み取ることはできません。
もしかしたら、昔の土地利用の名残なのではないかと思い調べてみたところ、ここにはかつて「海軍無線電信所船橋送信所」という施設があったことがわかりました。太平洋戦争の終戦まで、ここには日本海軍の施設があったのです。円の中心に建てられた高さ200mの主塔からは、周囲に建てられた18本の副塔(高さ60m)に向けて放射状にアンテナ線が張られていたそうです。高い建物が少なかった当時はずいぶん目立つ施設だったでしょうね。
上の写真の記念碑に書かれていた碑文を読んでみたところ、この施設ができたのは1914年のことで、その翌年には、ハワイの通信施設を経由して大正天皇とアメリカ大統領ウィルソンとの交信がおこなわれたそうです。また、1923年に起こった関東大震災のときには、東京都心の被災状況を発信することで、その後の救援活動に大いに役立ったそうです。1941年、太平洋戦争開戦時に、真珠湾攻撃部隊に向けて攻撃実行を命じる暗号「ニイタカヤマノボレ一二〇八」の電文もこの無線所から送られました。暗号のなかにある「ニイタカヤマ」というのは、当時日本最高峰だった山のことです。「えっ? 日本最高峰は富士山じゃないの?」と思った人もいるかもしれませんが、戦前は違ったんです。この山、今は玉山という名で、実は台湾にあります。戦前の台湾は日本の国土の一部だったんです。もともと玉山という名だったのを、「新しい日本の最高峰の山」という意味で「新高山」にしたのだそうです。
さて、この円形をもう少し大きくして確認してみましょう。
地図をよく見ると、円の左右にわずかな凹みがあることに気づきます。
左側の凹みはわかりやすいですね。武蔵野線の線路がすぐ横を通っていることから、この線路の建設時にできたものなのでしょう。もし、線路をこの円の外側に通そうと思ったら、明らかに不自然なカーブになってしまい、電車の運行にも支障が出そうです。
右側の凹みはもっと急なカーブになっていますね。すぐ横に神社の地図記号があるので、この敷地を避けたのかもしれませんね。
下の写真は、上の地図と同じ範囲を示した終戦直後のものです。当時はまだ円形の道路は作られていないので、黄色い線でそれを示しています。赤い丸で囲んだところをよく見ると、円のなかに一部が入り込んでいるものがあることがわかります。これが上の地図中にある神社なのでしょうか? これは現地に行って確かめてみるしかなさそうです。
下の写真は、円形道路の窪みの部分を撮ったものです。結構深く円内に食い込んでいますよね。ここを通る車もスピードを落として通過していましたからね。この写真の左手に諏訪神社があるのですが、神社の向きが上の写真とまったく同じでした。やはり昔の写真に写っていたのは神社の敷地だったのです。
船橋無線塔は1970年代初めに解体され、住宅地や公園となりました。そしてその周りを取り巻く形でつくられたのが円形の道路でした。本当はきれいな円形にしたかったのかもしれませんが、歴史のある神社の敷地を削ることはできなかったのでしょうね。そして生まれたのがこの凹みだったのです。
「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。
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