白井亨(しらいとおる)

~東京都足立区 「東はどこだ!」編~

2023.07.14

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

埼玉県さいたま市の浦和は、東西南北すべての駅が揃っていることで知られています。浦和の場合は、中浦和や武蔵浦和というのもあるのでちょっとクドい気もしますが、北があれば南もあり、東があれば西もセットになるということが一般的なようです。

ところが、東京都足立区にある西新井大師には、それと対になる東新井大師がどこにも存在しないのです。この寺院があるのは足立区西新井1丁目ですが、東新井という地名すらもありません。これは「?」ですね。

早速訪ねてみた西新井大師は、上の写真の通り、とても立派な寺院でした。関東厄除け三大師の1つにもなっていて、毎年多くの初詣客で賑わっているだけありますね。
西新井大師というのは通称で、本来は五智山遍照院總持寺というそうですが、ここではわかりやすい西新井大師で通すことにしますね。
大師という名からもわかる通り、この寺は弘法大師空海にゆかりのある寺院です。ちなみに、大師というのは本来偉いお坊さんに対する尊敬の意味を込めた呼び方ですので、空海だけではないんです。実際に、空海と同じ時代に活躍した最澄にも伝教大師という呼び名がありますからね。でも、大師と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、やはり空海のようです。

この寺が創建されたのは平安時代初期の826年のこと。空海がここを通ったときに、ご本尊となっている十一面観音を彫ったことが始まりだそうです。1200年近い歴史があるのですから、立派な姿をしていることも納得できます。

さて、西新井の地名ですが、その由来は境内の中にありました。それが、下の写真の「加持水の井戸」です。

空海がこの地を通ったとき、人々は疫病に苦しんでいたそうです。それを見た空海が十一面観音を掘って祈願をしたところ、枯れていたはずの井戸から水が湧き出てきて人々の病気も治ったそうです。
この井戸がお堂の西側にある、西にある井戸ということから西新井の地名が付いたということです。つまり、この井戸は西新井大師にとってとても大事な場所で、だからこそ寺院全体の通称にまでなったということなんですね。単に地名に東や西を付けただけのところとは訳が違ったんです。

さて、上の地図を見ると、西新井駅から西新井大師の近くまで、とても短い鉄道路線が伸びていることがわかります。これは東武大師線という路線で、その名の通り西新井大師参詣のための鉄道です。下の写真は大師前駅のものですが、多くの参拝客のためにとても広々とつくられていることがわかりますね。大師前駅は立派ですが、この駅に来るのはたった2両の電車。しかも、始発駅を出発したと思ったらあっという間に終点に着いてしまうような小さな鉄道なのです。

西新井駅から西新井大師までは1㎞あまりですから、歩いても行かれる距離ですよね。地図を見てもかなり近いことがわかります。実際に私も歩きましたが、ゆっくり歩いても15分ほどで着きました。わざわざ鉄道を敷く必要はあるのかと、ちょっと疑問に感じますね。
実はこの路線、現在の環状七号線とほぼ同じルートを通って、東武東上線の上板橋駅までを結ぶ「西板線」という路線の一部として建設されました。建設計画は大正時代に立てられていたのですが、関東大震災によって大きな被害を受けた他の鉄道の復旧が優先されたことや、用地の確保が難しくなったことなどにより、残念ながら計画は立ち消えになってしまいました。

ちなみにこの大師前駅、切符の販売機も自動改札もありません。駅の入り口からそのままホームに上がって電車に乗ることができます。「えっ、タダで乗れるの?」と思った人、そんなわけないでしょ! 西新井駅では乗り換えのときでも必ず改札を通らなければならず、ここで料金を取られるんですよ。

さて、西新井駅ですが、西新井大師から見ると東にありますね。住所がそうなっているのでしかたないんですけど、どこもかしこも西ばかりです。さらに地図を見てみると、なんと「西新井大師西駅」が…。駅名に西が2つも付いています。

西ばかりの散歩だったので、せっかくだから西が2つも付く駅を見てみようと、たどり着いた西新井大師西駅でついに見つけたんです…東を!!

・・・とオチがついたところで、今回はここまでにしておきます(笑)

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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