白井亨(しらいとおる)

~千葉県勝浦市 東京から2番目に近いリアス海岸編~

2023.03.14

~千葉県勝浦市 東京から2番目に近いリアス海岸編~

みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。

社会科のテキストでよく見かける用語として「リアス海岸」というのがあります(昔は「リアス『式』海岸」といいましたが、最近の教科書では「リアス海岸」という表記になっています)。
これは、海水面が上昇して山や丘が海に沈んだことで、谷の部分に海水が入り込んでできた複雑な海岸のことです。地図で見ると海岸線がギザギザになっていて、せまい湾が複雑に入り込んでいることがわかります。日本だと、東北地方の三陸海岸や三重県の伊勢志摩、福井県の若狭湾など、東京からはちょっと遠いところが有名ですが、実は東京から近いところにもあるんですよ。その1つが千葉県房総半島です。房総半島は、西の東京湾岸を内房、東の太平洋岸を外房といいますが、リアス海岸が見られるのは外房の南部、千葉県の形をしたゆるキャラ“チーバくん”のお尻のあたりになります。

黄色で囲んだあたりを、もう少し拡大してみましょう。

勝浦湾の東西に、入り組んだ海岸線があることがわかりますね。三陸海岸ほどダイナミックなものではないですけど、これは確かにリアス海岸でしょう。千葉県というと平坦な地形が多い気がしますが、電車に乗っていてもこのあたりは数多くのトンネルがあり、険しい地形であることがわかります。
次の写真は、勝浦湾の東の方向を撮ったものです。上は八幡岬から勝浦灯台の方角、下は勝浦灯台より少し北の海岸線ですが、どちらも切り立った崖が確認できます。ここから北に20㎞ほど先には、この付近の海岸とはまったく景色の異なる九十九里浜があることを考えると、ちょっと不思議な気もしますね。おそらく、房総半島の北部と南部では地形の成り立ちが違うのでしょう。
えっ、どうちがうのかって? それは理科の分野になりますので、ここでは触れないことにしておきましょう。正直に白状すれば、このあたりの難しいことは社会科の先生にはわからないんです💦

さて、この勝浦市ですが、最近は「避暑地」としてその名が知られているとのこと。避暑地ということは、夏でも比較的涼しいということですよね。
実際に気象庁のホームページでデータを調べてみたところ、2022年8月の東京の平均気温が27.5℃なのに対して勝浦は25.7℃で、2度ほど低くなっています。同じく2022年8月の最高気温を見ると、東京が32.0℃に対して勝浦は29.2℃で、3度近くも低くなっています。1991年から2020年までの8月の平年値を見ても、東京26.9℃、勝浦25.9℃と、やはり勝浦のほうが低くなっています。さらに調べてみたところ、勝浦は1906年の観測開始以降100年以上一度も35℃を超えたことがないのだとか…。35℃以上というと「猛暑日」ですから、勝浦は猛暑日知らずの街ということになるんですね。
関東近辺の避暑地といえば、軽井沢や箱根、那須高原などがよく知られていますが、いずれも標高の高いところにあります。千葉県の最高峰は標高408mの愛宕山。標高が高いと言える場所は皆無で、どう考えても涼しい場所があるとは思えないですね。同じ千葉県内でも、西岸の千葉市などは東京とほとんど変わらないので、なぜ勝浦だけが涼しいのか、これは「?」ですね。

調べてみたところ次のような理由でした。
最初に挙げた千葉県全体の地図をもう一度見てください。勝浦市のあたりは、房総半島が東の方にふくらんで海に突き出ているということがわかります。このような地形のところは、海水温が気温に影響しやすいそうです。
さらに、勝浦市の沖合の海の地形を見てください。陸から近いところの水深が、すぐに深くなっていることがわかります。海水温は深いところのほうが低くなります。冷たい海水が海風の影響で海面に上がってくることで、勝浦市沖の海面温度は低くなります。そのため、海から涼しい風が吹いて気温が低くなるのです。
同じような海に突き出た地形としては、千葉県最東端の銚子市もそうですね。銚子の2022年8月の気温を調べてみたところ、平均気温25.6℃、最高気温29.6℃と、勝浦とほぼ同じになっていました。

リアス海岸は、漁港にするのに適した地形だと、リンスタのテキストにも書いてあります。勝浦にも漁港があり、生鮮かつおの水揚げ港としては日本有数の漁港だそうです。

勝浦には、2015年のB-1グランプリで優勝した「勝浦タンタンメン」というB級グルメもあります。また、勝浦の朝市は「日本三大朝市」の1つにもなっており、なんと400年もの歴史があるそうです。歴史ある朝市で地元の方との触れ合いもできそうですね。
美しいリアス海岸の風景とおだやかな気候、新鮮な魚介類などのグルメが食べられるとなれば、かなり魅力的な観光地ですよね。東京から2時間程度で行かれるので、気軽に日帰り旅行もできそうですね。みなさんもちょっと出かけてみませんか?

最後に、冬の気候はどうなんだろうというのが気になって、2023年1月の気温を調べてみました。
平均気温は東京5.7℃、勝浦6.7℃、最低気温は東京1.8℃、勝浦3.4℃で、勝浦のほうが暖かくなっています。夏だけでなく、冬から春の旅もいいかもしれませんね。

「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。

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