~東京都台東区 上野編~
2023.02.06
みなさんこんにちは。
リンスタ社会科担当の白井です。
「ふるさとの訛りなつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きに行く」
岩手県出身の歌人石川啄木が詠んだ歌ですね。
この歌に詠まれている「停車場」は、東京の上野駅のことだと言われています。
上野駅は、長い間東北地方や北陸地方に向かう列車のターミナルでした。上野に到着した乗客の会話からは、啄木の故郷岩手のことばも聞こえてきたのでしょう。
さて、この上野駅のある場所ですが、その名とは少々違う場所のようです。
「野」というのは「台地状の地形」という意味を持つ文字なので、上野という地名からは「台地の上のところ」が思い浮かびますね。ところが、地図を見る限り「台地の下」にあるみたいなんです。
さらに地図をよく見ると、上野駅の東にある低い土地の方にも「北上野」や「東上野」という住所が見られます。このあたりは明らかに「上」でも「野」でもなさそうですよねぇ…。
地図からは、これ以上のことがわからなかったので、また現地に出かけてみることにしました。
そして、上野駅に程近いところに見つけたのが下の写真の神社です。
神社の名は下谷神社。上野・下谷…まさに対になる地名じゃないですか!
これを踏まえて、もう一度地図を見てみましょう。
上野駅の周辺には、下谷、入谷、谷中など、「谷」のつく地名がたくさんあることに気づきます。また、根津という地名も、「津」というのは港を表す文字ですから、「谷」と同じように低い位置にある場所だと言えそうです。
もうわかりましたね。本当の上野は、現在の上野恩賜公園(地図中では上野公園)のある高台で、上野駅はその近くにあることからつけられた駅名だということです。上野駅のある場所やその東側の低い土地は、もともと下谷、入谷などの低地を表す地名で、近代になってからの地名変更によって、北上野や東上野といった住所になったのでしょう。
今でも、新興住宅地の地名には、「〇〇丘」とか「〇〇台」といったものが多いですよね。おそらく「〇〇谷」とか「〇〇沼」いう名の新興住宅地はないでしょう。日本は地震などの災害の多い国ですから、低地よりは高台のほうが災害の被害は少なそうです。「丘」「台」という文字のほうが印象は良く、住宅も売りやすいということでしょうね。ただ、このような地名はよく調べてみる必要があります。「〇〇台」とつけられた新興住宅地の昔の地名が「〇〇谷」ということもあるかもしれませんよ(笑)
地図を見て、もう1つ気づいたことがあります。
上野恩賜公園の北に「谷中霊園」があります。ここは台地の上ですから、「谷」ではないですよね。
よく見ると、谷中霊園の西側の低い土地の住所が谷中になっていることがわかります。ここも、もともとの谷中は低い土地の部分で、その地名の近くにあったから谷中霊園という名称になったと考えられます。
つまり、上野駅は上野ではなく、谷中霊園は谷中ではなかったということです。
さらに、上野駅の次の駅である鶯谷駅のあたりには根岸という住所があります。その次の日暮里駅の地名の語源は新堀だったとのこと。どちらも水辺に関係ある文字が使われています。もしかして、はるか昔このあたりは海だったのかもしれませんね。そう考えれば、「谷」「津」「岸」「堀」といった文字の住所があることも納得できます。
「?」はきっとそこにある
「?」を知ればおもしろい!
みなさんも、身近な「?」を見つけて楽しんでみてください。
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