桑名正和(くわなまさかず)

バイオームに見る東京の植生

2025.01.24

 都会のところどころにある公園では、各季節にいろいろな植物が花を咲かせ、昆虫がとんできて、
のどかな光景を作り出しています。
 公園は人工的に植樹されているところも多いですから、本来そこに生えていた植物がそのまま残っているとは限りません。

 今でこそ、建造物でおおわれている東京ですが、ヒトの手が加わる前はどのような植物がはえていたのだろうか、と気になるところでもあります。

 中学受験の理科で植物について学習するのは概ね小学5年生までです。
 サクラはバラ科であるといった分類から、光合成、呼吸など、植物の体内で行われている反応などが主です。

 小学6年生で植物について少しだけ新しいことを学習します。
 その中の1つがどういう環境の場所にどういう植物がはえるかという「バイオーム」と呼ばれるものです。
地球上のあらゆる場所を年降水量と年平均気温で縦横に軸をとり、その中に生息している植物の種類を分類したものです。

 私がこの図を初めて見たのは高校生のときだったと記憶しているのですが、いつのまにか中学受験内容でも見かけるようになりました。
 アフリカのライオンがいる「サバンナ」はテレビなどでもなじみがある言葉ですが植生を表す言葉だというところまでは知らないひとが多そうです。

 針葉樹、熱帯雨林などよくきかれる言葉から、いまひとつぴんとこない言葉まであります。

夏緑樹林かりょくじゅりん」という言葉はあまり聞きなじみがないかもしれません。
私がパソコンで「かりょくじゅりん」を変換すると「火力樹林」とでてきて「夏緑」が変換候補にもなりませんでした。それだけ一般的な言葉ではないのかもしれません。
夏緑樹林は夏に緑色をしている森林ということなので「落葉樹」が生えている森林ということになります。
なぜ落葉樹林という言い方をしないかというと、「雨緑樹林」も落葉樹で区別するためと考えられます。
雨緑樹林は日本にはない気候です。
夏緑樹林の地域は年平均気温が2030℃ですから、1年を通じて温暖なのですが、「雨季」と「乾季」があり、乾季には落葉します。インドネシアやアフリカの一部の地域がこれにあたります。

 さて、東京に話を戻します。
 気象庁の統計によると東京の年平均気温はここ数年17℃前後、
降水量は年による変動があるのですが年1500mm2000mmといったところです。
バイオームの図の中に東京を入れるとこのような位置です。

 照葉樹林ど真ん中ですね。
 照葉樹林はいわゆる「常緑樹」です。冬でも葉を落とさない樹木です。
 ということは、今のこの時期に葉を落とさずに生えている樹木こそが、もともと東京に生えていた樹木と考えることができます。

 常緑樹の高木はカシとシイが代表的なもので、公園に常緑樹があったらいずれかの仲間の可能性が高そうです。

 冬の公園でも、葉がたくさんついている光景はけっこうあるものです。
 こちらは寒さが残る3月上旬の公園の一角です。

 紅葉シーズンに見られるイロハモミジなどの落葉樹は「夏緑樹林」に分類されますから、東京よりも年平均気温が低い地域です。北というよりは標高が高い山の方と考えるとよさそうです。
 ですから、公園のイロハモミジは山のほうから植樹されている可能性が高いということにもなります。

 気候の側面から植物を眺めるとまた違った発見がありそうですね。

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