桑名正和(くわなまさかず)

ハモグリバエがもぐったあと

2024.09.19

 今の時期は雨が多く、晴れると日差しがかなり強い。
 長い時間植物を見て回ると熱中症になりそうなものの、みてまわるといろいろ発見があるものです。

 交差点のかたすみにセイヨウアブラナと思われる花が春に咲いていたのですが、花はすっかりなくなり葉をたくさんつけています。

 何枚かの葉に白いすじのようなものが入っていました。
 葉にあるすじといえば葉脈がありますが、明らかにそれとは違う、白絵具で線をつけたような、そんな不自然な白いすじです。

 葉に白いすじをつけるのはハモグリバエの幼虫です。名前の通り、葉にもぐって生活しています。
 ハモグリバエの成虫は2mm程度で一般的にみかける小型のハエの代表であるショウジョウバエなどと同じくらいの大きさです。メスのハモグリバエはコオロギと同じように産卵管をもち、葉の内部に産卵します。
卵の直径は0.20.3mmです。中学受験で学習する定番のモンシロチョウやアゲハと比べるとハモグリバエの卵は小さめです。ハモグリバエの卵を45個ならべて、ようやく定規の最小目盛り1mmになるということですから、かなり小さめです。

 卵からかえったハモグリバエの幼虫は葉の内部の細胞を食べながら葉の中を移動。通り道になった部分が白いすじとして残っています。葉の内部にいるので、カマキリやクモなど、他の昆虫をエサとする生物から守られた状態です。

 それにしても白いすじだけでハモグリバエの幼虫本体が見当たらない。
 どこにいるのだろうかと、葉を裏返してみたら見つけました。
 裏側に身を潜めていたようです。

 それにしても、表側には白いすじがあるのですが、裏側にはすじは見当たらず。
 幼虫の通り道が葉の中のどこなのかを考える材料になりそうです。

 小学5年の理科では葉の内部のつくりを学習し、このような図が登場しています。

 葉の表側には細胞がぎっしりつまった柵状組織があります。内部に葉緑体を多く含み、葉の表側のほうが緑色が濃く見えるのも柵状組織の密集した細胞によるものです。
 葉の裏側に近いほうが、細胞はややばらけたかんじになっている「海綿状組織」です。
 ハモグリバエによってつけられた白いすじが表側に見られたということは、ハモグリバエの幼虫が柵状組織の細胞を食べながらトンネルをつくり、海綿状組織の中で一休みしていると考えるとよさそうです。

 ハモグリバエは葉の中に身を潜めているから安心かというとそうでもないようです。ハモグリバエの幼虫に寄生する寄生バチが多くいることが知られています。寄生バチはハモグリバエの幼虫に産卵し、寄生バチの幼虫がハモグリバエの体内で生活し、ハモグリバエの幼虫をそのまま食べるという昆虫です。
 ハモグリバエは敵から身を隠すために葉の中にいるのでしょうが、寄生バチには見つかってしまっています。

 昆虫のいろいろな生態がうかがえる季節です。
 もう少し他の昆虫もさがしてみましょうか。

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