桑名正和(くわなまさかず)

胃液で胃は消化されないの?

2024.06.04

 今日も元気にごはんを食べて出発。
 毎日欠かせないですね。

 小学4年の理科で、消化器官について学び、さらに小学5年の理科では消化器官で、それぞれの栄養素がどのように消化されていくかを学びます。

 毎日ごはんなどの炭水化物を食べている理由は主要な栄養分であるでんぷんを体内に取り込むためです。
 ごはんをたくさん食べて体が大きくなったといっても、体がごはんのようになっていくことはありません。当たり前といえば当たり前なのですが、ごはんを食べても体がごはんにならないのか、不思議でもあります。
 ごはんに含まれるでんぷんはまず口の中で唾液によって消化され、麦芽糖になります。口でもぐもぐかんでいると唾液と混じって、少しずつ甘い味を感じることができるようになります。

 同じように、肉、魚、卵などに多く含まれるタンパク質は胃液で消化されてペプトンになります。でんぷんもタンパク質も粒が大きいので、体内に直接取り込まれることはなく、粒をこまかくして水に溶かした状態で小腸から吸収されていきます。

 と、このようなかんじで消化について学んでいくわけですが、ここでふとした疑問もおこります。タイトルにもあるとおり、タンパク質を消化する胃そのものを胃液が消化することはないのか。胃だけではなくヒトの体の15%程度はタンパク質でできているということもでてきていますので、胃液がでているのに、体を作っているタンパク質は消化されないのでしょうか。

 あえてそれを生徒に問いかけると、胃が粘膜でおおわれていて胃液から守っていると答えてくれることもあり、さすがよく知っていると感心します。ところが、それだと答えとしてはまだ半分。実際、インターネットで検索しても、病院や製薬会社のホームページなど、粘膜でおおわれているからという答えがたくさんでてきます。胃痛や胃薬にからめて紹介されていますからね。でもこれだけだと、大事なことがぬけているような。

 胃液は胃壁にある細胞で作られ、胃の内部に出されます。そこで肉や魚などの食べたものと混ざり、タンパク質を消化、その後すい臓から出るすい液などでさらに消化がすすんでアミノ酸となり血液中へ。さて、胃壁で胃液ができるのですが、その段階で胃壁がとかされないの?という疑問が残ります。そこに胃液が体をとかさないように食物だけにはたらくようにするすぐれた機能があります。

 胃液は消化酵素のペプシンと一緒に塩酸を含むことで強い酸性になっています。
 胃壁にあるときのペプシンは「ペプシノーゲン」という状態で、タンパク質を消化するはたらきをもっていません。胃壁には「ペプシノーゲン」とは別に塩酸を作る部分があり、そこから塩酸も出されます。胃の内部でペプシノーゲンが塩酸とまざることで、タンパク質を消化するペプシンに変化します。また、ペプシンは塩酸がある酸性のときにしかはたらきません。

 食べたものが胃から十二指腸におくられたあとは、すい臓から出るすい液とまざります。すい液は弱アルカリ性になっています。すい液が胃液と中和することで、酸性ではなくなるのでペプシンははたらかなくなります。胃液のペプシンは胃の中だけでタンパク質を消化して、それ以降のタンパク質を消化しないことで他の臓器も傷つけないようにしているということです。中和についての学習はまだ先になるので、消化について学ぶ際にはここまで触れることがないですが、いろいろな単元を学んで組み合わせていくと、より深い仕組みが理解できるようになってきます。

 からだは実によくできたつくりをしているものです。
 さて、このあとは何を食べましょうか。

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