桑名正和(くわなまさかず)

サクラの季節はなかなか晴れてくれない

2024.03.26

 寒い冬が過ぎて、(いうほど今年は寒くなかったような気もしますが)暖かくなってくると、植物も葉をつけ花をつけ見る目を楽しませてくれます。
 サクラの花が開くと、近所の公園でもレジャーシートを広げて食事を楽しむ光景を見かけます。
 そんな花見シーズンですが、せっかくサクラ満開の日曜日なのに雨、ということも多くあります。
 私自身毎年サクラの光景をおさめようとカメラを持ち歩くのですが、すみわたった青空に満開のサクラという写真を撮れることはあまり多くありません。

 ということで、今回のテーマはサクラではなく春の天気についてです。
 中学受験に向けた天気の学習は小学4年生の前半から始まります。春の天気の特徴は「晴れの日とくもりや雨の日が、数日ごとにくり返されます。」とあります。「今年の春は雨で・・・」ではなく毎年決まった傾向としてサクラの季節には雨が降りやすいということです。小学4年生の後半では春の天気について「西のほうから、偏西風の影響で高気圧と低気圧がかわるがわるやってきます。」と、やや知識が増えます。低気圧は空気が少ない部分なので海水が蒸発してできた水蒸気が集まって上空で冷やされ雲ができてきます。小学5年生にあると春の天気にかかわる高気圧が「移動性高気圧」であることが紹介されます。

 冬は上空の気温が低いので雲ができにくく、すんだ青空が広がっていますが、あたたかくなると上空の空気に含まれる水蒸気が増えるのでできる雲が大きくなってくるというのが春ならではの空です。

 そういうサクラが咲く季節ならではの天気なのでいろいろな表現があります。

花冷え・・・サクラの花が咲く季節に寒くなること
花曇り・・・サクラの花が咲く季節に雲がかかること

 サクラの季節に天気がかわりやすいことは昔から同じなようで、万葉集にもよまれています。

 春雨は いたくな降りそ 桜花 いまだ見なくに 散らまく惜しも (万葉集101870)

「な~そ」はしないでほしいという古典文法の表現。なのでこの歌はサクラの花を見る前に散るのが惜しいから雨が降らないでほしい、という内容になります。こういう歌が詠まれたということは、せっかくサクラが咲いてもそれだけ雨が多くて楽しめる時期があまりないということを示しています。

 そんなサクラですが、遠くなら眺めて楽しむのもいいですが、近づいて花のつくりなども観察しましょう。

 お花見で親しまれる代表的なサクラは江戸時代にエドヒガンザクラとオオシマザクラの間でつくられたソメイヨシノ。サクラが属しているバラ科の特徴は花びら5枚の離弁花。5枚の花びらであることがよくわかるつくりをしています。花が散るときは1枚ずつひらひら散るので花見シーズンの終盤はサクラ吹雪を楽しむことができるのも、花びらが1枚ずつはなれる離弁花だからこそ。

 できれば満開のサクラを長く楽しみたいと思っても、あっという間に散ってしまう、それがなぜかそういう研究をしている研究者もいます。花が散るのは花びらの付け根に「離層」というのが形成され1枚ずつきりはなさることによることが知られています。サクラが咲く時期は風が強いこともありますが、風が強いからといっても、よくこの風で花が散らないな、ということもあります。風や雨だけではなくそれぞれの植物のタイミングで「今」というときに花が散っていくのが不思議なところです。

 花が咲くこと、散ることは当たり前と思うか、そう思わないか。
 花見を楽しむ皆さんが、その謎に疑問を持つと、その仕組みを追求する新たな研究者が誕生するかもしれません。

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