桑名正和(くわなまさかず)

春の定番植物「アブラナ」

2024.03.08

 春になるといろいろな植物が花をつけ、昆虫が訪れるようになります。
 そんな中の1つで小学校の教科書でもおなじみなものがアブラナです。

 黄色でおおわれた光景は青空とのコントラストがきれいです。
 中学受験の理科ではアブラナは小学4年生の第1回から登場します。モンシロチョウが卵を産みにくる植物です。アブラナはアブラナ科の植物の1つ。モンシロチョウが卵を産むのはアブラナ科全般、キャベツ、ダイコンなどがアブラナ科です。

 近づいて花に注目です。

 アブラナ科の花は花びらが4枚。サクラをはじめとして、5枚の花びらをもつ植物が多くあるので、アブラナ科の花びらが4枚であることを覚えておくことがまず大事です。
 そして、花の中央に1本のめしべ、それをかこむように6本のおしべがあります。写真を見ると、おしべが6本あることがやや見えにくいですね。
 このあたりにあります。

 おしべの先端部分のふくらんだ「葯(やく)」で花粉が作られ、花粉は昆虫についてめしべまで運ばれ、受粉します。受粉しないと種子ができないので、多くの植物にとって昆虫は重要な役割をもっています。
 写真の上と下の2本のおしべが見えにくいのは長さが違うからです。アブラナは長い4本のおしべと短い2本のおしべを持っています。見えにくいおしべは短いため、かげになっているようです。

 あらためてアブラナの花全体に注目。

 ふくらんでいる部分はすでに花が咲き終わり、中に種子がつくられつつあります。もともとはその部分に花がさいていた、ということになります。アブラナは高くのびながら花をつけているので、低い部分で花を咲かせ、高くのびながら次の花をつける。すでに咲いていた花は咲き終わる、その繰り返しで34月にかけて花をつけながら伸長成長をつづけ、1m以上の高さになります。

 アブラナと「菜の花」は何が違うの?という質問を時折うけます。いろいろなところで「菜の花」ということばが使われていますから、同じ意味にも感じられるのもわかります。「菜の花」はあくまでも「花」をさしていて、アブラナは花でなくてもいいといえばわかるかと思います。アブラナは植物名ですから、葉でも根でもアブラナです。アブラナの葉だけとって「菜の花」とはいわないですよね。あとは、「菜の花」といった場合、アブラナだけではなく広くアブラナ科アブラナ属の植物全般の花がさいている状態に対して使われていそうです。普段の食事でおなじみのキャベツも、花をつけるとアブラナによく似ているので、花だけ見たら「菜の花」です。

 さらに、小学5年では種子に含まれる栄養分としてもアブラナが登場します。アブラナは名前に「あぶら」がついているとおり、あぶら(=脂肪)が多い種子です。イネ、トウモロコシなどでんぷんを多く含む種子が多くありますが、アブラナはゴマ、ヒマワリなどとあわせて脂肪が多い種子であることを覚えておく必要があります。アブラナからとった「菜種油」は食用にもなっていますから、日常生活でも知らないうちにアブラナに接しているかもしれません。

 なにかと理科的な話題が豊富なアブラナです。
 皆さんのまわりでは見かけるでしょうか。

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