桑名正和(くわなまさかず)

キンモクセイが香る秋

2023.10.23

 真夏の暑さがすぎさって、心地よい風を感じる秋が到来。チョウが飛ぶ光景も多く見るようになりました。公園の一部の木がオレンジ色に染まっていました。小さい花がたくさんさいているキンモクセイです。

 キンモクセイは中国原産のモクセイ科に属する常緑樹です。春、夏は葉だけなので、あまり目立たないのですが、10月になると一気に花をつけるので、これはキンモクセイだったか、と気が付きます。

 近づいてみると花びらが4枚あるように見えます。ですが、さらによくみると4枚の花びらは根本がつながっていて、合弁花であることがわかります。日本にはえているキンモクセイは中国から導入された雄株で、おしべだけしかつけないことから、花はさいていても果実はできません。果実ができないということは種子もできないので、種子から育てるということはできません。種子ができないといえば、日本に生えている代表的なサクラであるソメイヨシノもそうですね。

 そのような樹木は挿し木で増やします。枝を土にさしておくと、次第に根が出てくるという手法。樹木の生命力は見事なものです。

 キンモクセイといえば芳香剤に用いられています。公園で咲いているキンモクセイに近づくとほのかに甘いような香りを感じました。花の香りというのは花びらの色同様に昆虫を呼び寄せる手段の1つですが、キンモクセイの香りは多くの昆虫を寄せ付けないという不思議な研究結果がでているようです。確かに私が観察したときにもミツバチはいたものの、今の時期に多く見かけるアゲハなどのチョウは全くキンモクセイには近づいていませんでした。

 植物からすると、特定の昆虫だけにきてもらったほうが受粉しやすくなるということもいえるので、特定の昆虫にのみ好まれる香りを出すというのは1つの進化といえそうです。

 キンモクセイの花は11月上旬くらいまで見ることができます。見かけた際には、そこの集まる昆虫にも注目です。

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