オミナエシはオミナエシ科ではなくなった話
2023.10.06
9月になっても暑い日が続きましたが、植物の世界はだんだんと秋の装い。その理由は秋に花をつける植物の多くは「短日植物」、1日の間の太陽が出ている時間が短くなっていくことを感じ取って花を咲かせるから。気温によらず、その日の昼の長さは毎年かわらないので、その時期がくれば花をつけます。
その中の1つ、あざやかな黄色の花が特徴的なこちらが、秋の七草の1つとして学習するオミナエシです。
オミナエシの原産は東アジアですが、日本にも古くから生えている植物で、奈良時代につくられた万葉集の中の和歌にも多く登場しています。その中の1つ
ひぐらしの 鳴きぬる時は をみなへし 咲きたる野辺を 行きつつ見べし (万葉集17巻3951)
ヒグラシにオミナエシ、季節感たっぷりで、理科的にステキな歌です。
下から見上げると、青空に黄色の花があざやかです。ハチのような小さい昆虫が多くオミナエシを訪れています。
そんなオミナエシなのですが、かつてオミナエシ科として分類されていたのですが、2009年のAPG分類体系でスイカズラ科に統合されて、スイカズラ科オミナエシ属になりました。突然分類が変わるという不思議な話。昨今このようなことがいろいろとおこっています。今回はそんな分類に関する話を紹介します。
この世の中のあらゆる生物は「界―門-綱-目-科-属-種」で分類されています。
人間も生物の1つですから「動物界-脊椎動物門-哺乳綱-霊長目-ヒト科-ホモ属-サピエンス種」として分類されています。かたい話ではありますが、ヒトを哺乳類とか霊長類とかいうのも、この分類の中にはまっていることばです。
今回はオミナエシを中心に取り上げているので、植物に話を戻します。この分類はスウェーデンの生物学者リンネによってつくられた分類体系で、1753年に「植物種誌」にかかれていたものがもとです。最先端の科学技術がない当時、植物を花びらの枚数などの見た目をもとに細かく分類していったものとされています。近年はそれを遺伝子をもとに再分類するという流れがおこっています。遺伝子を調べてもかなり多くの植物がそのままあてはまっているようで、当時リンネの観察力がかなりすごかったといわれています。
その中でも一部の植物で遺伝子をもとにした分類の組みなおしがされています。その1つとなったのがオミナエシです。オミナエシが属しているマツムシソウ目はもともと、スイカズラ科、オミナエシ科、レンプクソウ科、マツムシソウ科の4つの科があったのですが、マツムシソウ科とオミナエシ科をスイカズラ科に統合となりました。
これは世界的なことなのですが、日本国内で新しい分類があまり普及しておらず、図鑑などではオミナエシ科とかかれているものも多く見かけます。
植物に興味を持ったら入学した先の理科系部活動で研究してみるのもいいですね。
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