暗いところで学習すると目が悪くなるって本当?
2023.07.13
はいどーも!熊代です。
久しぶりにレギュラーコーナーです。
2023年度もいよいよ夏期学習が始まる頃になりました。
リンスタ中3生も受験対策の天王山をどのように踏破するのか、
戦略を立てて実行せんとするところです。
さて、学習を進めるにあたって、とても重要となるのが
「学習時間の確保」です。
5科目もあると、とにかくやることが多いですから、
リンスタ生は1日10時間~12時間を目指すことになります。
するとどうしても、夜分にも学習時間を取らなければならないことになります。
日中に比べ、どうしても暗い環境で学習することになるわけですから、
「勉強しすぎて目が悪くなってしまわないかしら」
と心配になる保護者の方も多いのではないでしょうか。
ということで今回は、
「暗いところで学習すると目が悪くなるって本当?」
について考えていきたいと思います。
『蛍の灯火 積む白雪』
『蛍の光 窓の雪』
などなど、
学習にまつわる歌の歌詞にもなっている故事成語「蛍雪の功」。
この言葉の成り立ちは、中国の晋の時代に遡ります。
その時代、
車胤と孫康という官吏を志望する2人の青年がいました。
非常にまじめで勤勉な彼らは、寸暇も惜しんで勉強をしていましたが、夜にはどうしても暗くて本を読むこともままなりません。
しかし、火を灯すための油を買うことができないほどに、どちらの家庭も貧しかったと言います。
そこで、彼らは、それぞれの方法で明かりを得る工夫をしました。
車胤は夏の間、蛍を何匹も捕まえてきて、絹の袋に入れて明かりを得ました。
孫康は冬の間、窓の高さまで雪を積み上げて、月や星の明かりを雪に反射させることで明かりを得ました。
こうして、夜分にも本を読み、学習を続ける努力をした2人の青年たちは、後に大きく出世し、高級官吏になることが叶ったそうです。
蛍と雪を使って、暗い夜にも本を読むことができた…とはいっても本当にわずかな明かりだったでしょうが…この故事を由来として、「蛍雪の功」という言葉が相成りました。
人が努力をしていないときにも努力を続ける。
これがいかに大きな成果をもたらすのかということを教えてくれる、とても大切な言葉です。
この夏も、リンスタ生にはそんな毎日を過ごしてほしいところです。
さて、そんな彼らですが、目は悪くなってしまわなかったのでしょうか。
だって、絹の袋に入れたたくさんの蛍やら、雪に反射する星々の光ですよ?
めちゃくちゃ暗いじゃないですか。
エネルギー革命後の世界である現代人の我々にとっては、考えられないくらいのわずかな明るさです。
もし、目が悪くなってしまったら、眼鏡なしには出世はできなかったことでしょう。
彼らが眼鏡をしていたかどうか、目が悪かったかどうか、ということは調べてもよくわかりません。
でも、決定的なことがあります。
それは眼鏡の成立した年代です。
眼鏡の歴史は、13世紀ころのイタリアから始まったとされています。
現代日本では福井県鯖江市の眼鏡が特に有名ですね。
では中国の晋の時代はというと…
そうです。こちらは3世紀~5世紀の始めまでの間です。
とてもではないですが、眼鏡なんてものはなかったでしょう。
つまり、車胤と孫康という2人の青年は、毎夜暗い中で学習を続けていたにもかかわらず、目が悪くなることはなかったと仮説を立てることができるのです。
現代でもよく疑われがちな、この「暗い中での学習」ですが、学習環境の明度と視力には直接的な関係はないとされています。
では一体、なぜこの噂が発生したのでしょうか。
ヒトの眼球は、さまざまなつくりが集まってできています。
手作りの簡易的な図ではありますが、以下を見てみましょう。
網膜:光を刺激として受容し、視神経を通してその情報を脳に送る。
虹彩:ひとみの大きさを調節し、眼球に入る光の量を変える。
水晶体:レンズとも呼ばれ、眼球に入る光線を屈折させて像をつくる。
毛様体:水晶体の厚みを調節し、ピントを合わせる。筋肉である。
眼球は光を受け取り、脳で周囲の状況を画像として認識するための大切な器官です。
一般に「目が悪い」とされるのは、ものを見るときの「ピントを合わせる」機能の低下をさします。
つまり、「目が悪い」人は「毛様体」の機能が低下しているということです。
目でものをみるときのピントの合わせ方について見てみましょう。
近くのものに焦点を合わせて見るとき、レンズは厚い方が良いですから、水晶体を膨らませます。
このとき、毛様体が緊張して、硬くなります
反対に、遠くのものにピントを合わせ見るときには、レンズを薄くする必要があります。
このとき、毛様体は緩んでいます。
※レンズの厚みについては、中1の「凸レンズによって見える像」などの応用として学ぶこともありますね。
どうでしょうか。
毛様体は、近くのものをみるときにはぎゅっと硬直していて、遠くのものをみるときにはだら~んと緩んでいるのです。
ですから、眼球にとっては「近くのものを見続ける」ことがとても疲れる動作ということになります。
勘の良いリンスタ生の皆さんはもうわかってきたかもしれませんね。
暗い部屋では、暗いことによってどうしても本に顔を…目を近付けて読みます。
ですから、目の緊張状態が続いて、毛様体が疲れてしまうわけです。
暗いことそのものが問題だったのではなく、
暗いことで顔を近付けてものを見る、ということが原因だったわけです。
時代を遡るほどに、ヒトの生活圏と自然は、より隣り合わせになっていきます。
そんな中、生活とともに生きていた2人の青年は、学習の際に文字を読むことばかりではなく、遠くの山々や木々にも目を向けていて目を休めていたのかもしれません。
この「暗さ」についての論争は、最近では、逆説的な話も出てきました。
最近ではいわゆる純喫茶と呼ばれるようなものばかりではなく、カジュアルに入店できるカフェも増えましたね。
昔ながらの純喫茶もそうですが、
スターバックスに代表されるようなカフェでは、薄暗い雰囲気を保っているところが多いです。
そして同時に、そういった場所でも学習をしている学生が非常に多いですね。
近年はリモート勤務をしている大人もたくさんいます。
この薄暗い場所というのは、明かりが少ないことによって、不必要な情報が遮断されます。
それによって、かえって集中しやすいということがわかってきたのです。
ですから、一概に「学習するところは明るい方が良い」と考えるのは短絡的であるともいえます。
・本や机と、十分な距離を保てるほどの明るさにする。
・明るすぎず、暖色系の明かりを用いる。
・天井照明だけでなく、フロアランプやテーブルランプなども用いる。
などとすることで、より集中のできる環境をつくることができるわけです。
明かりというのは、
ただ単にオシャレな雰囲気を創出するだけでなく、こういった効果も期待できるわけですね。
さて、今回は「暗いところで学習すると目が悪くなるって本当?」について考えてみました。
カフェに入り浸って何時間も学習をする…熊代先生も学生の頃はよくやっていた記憶があります。
皆さんも、この夏期学習に向けての時間確保を目指して、
自分が集中して学習のできる環境を自分で探してみてはいかがでしょうか。
リンスタ生の皆さんは、より集中して高い学習効果を生み出すために、
授業で一緒にがんばりましょうね!
それでは、また次回!
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