熊代大地(くましろだいち)

リンスタ生の質問コーナー2 アボカドの種

2023.05.16

はいどーも!熊代です。

しばらくは質問コーナーシリーズを続けて参ります。
2つ目はこんな質問です。

『いろいろあってアボカドの種を割ってみたらこうなっていたのですが、どこがどういうつくりになっているのでしょうか。』
By 中2最難関高校入試対策コース R・Kくん

一体何があったらアボカドの種をハンマーで叩き割るような事態になるんだ!笑
でも一度くらい、割って中身を見てみたくなるような素敵なフォルムをしていますよね。なんて魅力的な種子なんでしょうか。

アボカドは「森のバター」として知られ、野菜ではなく果物です。
私にとってもアボカドは好物の一つです。和名では「ワニナシ(鰐梨)」と呼ばれます。

足がはやく、扱いにくい食材ではありますが、熟してすぐに薄切りにして、出し醤油に漬けておくと少々日持ちするようになってオススメです。
最近はダイスカットの冷凍アボカドも出回っていて、とっても助かりますね。

そして質問にもある種子は、とてもわかりやすい「有胚乳種子」です。

構造については、種子の部分だけを切り抜いた写真で見てみましょう。

赤で囲んだところが「胚」と呼ばれる部分で、ここがアボカドの木の本体となる部分です。
右側は、割った際に胚が抜けた跡ですね。

他の白い部分は「胚乳」と呼ばれ、発芽とその後の初期成長に必要な栄養が詰まっています。

そしてあまり知られていませんが、この種子はなんと「食べることができる」のです。
食べるというよりは、煮出してお茶やスープにして栄養を摂取することができます。
ダイエットや健康への効果も高く、トウモロコシ茶のような効果が期待できるそうですよ。
ちなみに、すごく苦いのでそのまま食べるのはオススメできません。
※個人的に試す場合は、ちゃんと調べてからにしましょう!

これだけ大きい種子ですから、実はそのまま捨てるにはもったいないですね。
この種子、他にもいろいろと面白いことがあります。

まず「発芽」について。
アボカドの種子は、「油分があると発芽しない」システムがあります。
果実中で発芽することを防ぐためなのでしょう。よく出来ていますね。

もちろん水分がないと発芽・成長できませんから、
家庭菜園として栽培するときには、最初は水耕栽培をする必要があります。

専門的な話が多くなるのでここでは割愛しますが、観葉植物としても十分素敵な見た目の木に成長するので、捨てずに育てる人も多いみたいですよ。

水耕栽培を試みる場合は、十分に油を洗ってから!ということですね。

 

そして何よりも。皆さん疑問に思ったことはありませんか?
果実が熟れてガスや匂いを発するということは、他の動物を引き寄せようとしているということですよね。

でもどうやって、「こんなにデカい種を動物に運んでもらう」ことができるのでしょうか。

果実を食べる⇒種子ごと飲み込む⇒糞とともに排出され、糞を肥料にして成長する

これが、多くの植物がとった結論です。
しかしアボカドは、現存する多くの動物の喉も肛門も通れるようなサイズではありません。

でも油分があってはいけないわけですから、食べてもらわない限りには発芽できないのです。

一体どうしてこのような仕組みに進化し、そして今日まで生き延びてこられたのでしょうか。

 

これにはとても簡単な理由があります。
アボカドの起源は、新生代に入ってしばらくしてからと言われています。

新生代の初期は、マンモスに代表されるような巨大な哺乳類が誕生しました。
アメリカ大陸では他にも、ゾウやウマ、ナマケモノやアルマジロの仲間が巨大化していました。

この頃はなんと、自動車くらいの大きさの哺乳類がたくさんいたそうですよ。
アボカドは脂肪分が多い=たくさんのエネルギーを蓄えていますから、これらの巨大生物にとっては貴重なエネルギー源となりました。

しかし、食べられるときにかみ砕かれてしまってはいけません。
発芽して子孫を広めていくためには、食べられてしまったあとも、種子は種子のままでなくてはならなかったのです。

 

ですからアボカドの種子は、
巨大生物たちに「かみ砕かれないほど硬く大きい姿」になり、
さらには「食べられても苦味を感じさせるほどの毒性」を得ることになりました。

 

そうして、丸のみにされた種子がそのまま排出され、
生息圏を広げていったと考えられています。

 

やがて人類が誕生する頃には、そこまでの巨大生物は減ってきました。
巨大生物は人類によっても狩られていったわけですから、これはアボカドにとっては大きな危機です。

しかし、人類はアボカドを好んで食べる動物でした。
人類はナマケモノやアルマジロのように巨大な動物ではありませんから、丸のみするようなことはしません。

ただ、知能が高く「栽培」してふやすことができる人類の手によって、アボカドはその危機を逃れたのでした。

実は巨大生物の相次ぐ絶滅から、人類がアボカドと出会うまでの間に
1万年ほど空白の期間があると言われています。

砂漠が少なく、多くの森や河川があったアメリカ大陸では、サルから人類に進化できませんでした。
(それがアボカドにとっては都合の良い環境だったわけですが)
アメリカ大陸先住民と呼ばれる人類も、もとはユーラシア大陸やアフリカ大陸から流れついたものたちと考えられています。

ですから、アメリカ大陸にのみ生息したアボカドは、その人類の長い旅路を待たなくてはならなかったわけです。
その出会いは紀元前500年頃と言われています。

 

この「アボカドが絶滅の危機にあった空白の1万年」については様々な憶測がありますが、どれも証拠不十分で結論には至っていないそうです。

このあたりもまた、ロマンがあっていいですね。
リンスタ卒業生からこういった世界を解明してくれる子が出てくると嬉しいのですが!

 

その後、人類によって果実が大きくなるように品種改良されて、今の姿となり、
私たちの食卓に登場してくれているというわけですね。

巨大生物のために大きくなりすぎた種子が、まさか人類の手によって救われるとは、当時のアボカドたちも考えてみなかったことでしょう。

 

さて、「叩き割ったアボカド」についての質問から、いくつか話題を挙げてみました。
R・Kくん、いかがだったでしょうか。

今や日本人の食卓にも欠かせないアボカド。
その古代のストーリーには、なんとも壮絶な生き残りをかけた進化の歴史があるのですね。

兎にも角にも、空白の1万年を生き延びてくれて本当によかった!

 

※ここでのお話は、諸説あるもののいくつかを紹介しています。
 部分的に最新の新説とは異なる内容もあることをご容赦ください。

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