中学受験 「算数1教科」入試のイマ
2023.04.11
「算数1教科」「算数のみ」入試は特殊性が高い
試験科目を「算数1教科」「算数のみ」とする首都圏の中学入試において、すべての入試回次を「算数1教科」「算数1のみ」で設定している中学校は存在しません。2~4教科の試験科目を中心的に設定している中学校が、一部回次を「算数1教科」「算数のみ」として設定しているのであって、中学受験の試験形態としては特殊性が高いといえるでしょう。それでも、算数1教科のみの入試を受験するメリットはあるのでしょうか。
「算数1教科」入試のメリットとは
以下に当てはまる場合はこの試験形態を受験するメリットがある、と言えそうです。
・算数が得意科目であり、かつ、他の試験科目の学習時間を確保するのが困難な場合
受験する中学校の試験科目が多いほど本番の入試までに必要とされる学習時間は当然長くなります。特に私立中学校の算数試験では、小学校で学習する教科としての算数の範囲を超える、いわゆる「〇〇算」と呼ばれる特殊算が中心に出題されるため専門的な対策学習が必要になります。さらに、社会や理科も小学校で学習する検定教科書の内容よりも更に踏み込んだ知識を求められるため必要な学習量が多くなります。
これらをふまえると、本番の入試までに費やせる学習時間が短い場合は算数の学習のみに焦点を当てて学習する作戦が有効になるかもしれません。ただし、算数1教科入試の難易度は中学校によってバラバラです。過年度に出題された内容(いわゆる「過去問」)をよく分析してから必要な学習内容を明確にする必要があります。入試問題の分析を得意とする学習塾に相談するのが得策と感じられる部分です。
・過去の入試実績のデータをふまえて受験校を定める場合
算数のみの入試は出題内容が難しくなりやすく、模擬試験で扱われる偏差値も高くなる傾向があるのは事実でしょう。2~4教科試験の回次と比べても募集人員数が少ないのが一般的ですから、結果として倍率も上昇し「狭き門」になりやすいと言えます。ところが、すべての中学校の算数1教科入試にこれが当てはまるわけではありません。以下の例のように本来は募集人員数が少ないにも関わらず、多数の受験生が合格を勝ち取るケースも存在します。
■2023年2月1日 午後実施 算数1教科試験
募集人数…20名
志願者数…266名
受験者数…247名
合格者数…188名(受験~合格倍率 約1.31倍)
もちろん合格者全員が入学するわけではありませんから、多めに合格者を認めるのはこの中学校のこの試験形態に限ったことではありません。しかしながら、募集人数に対しての合格者数という点では、算数1教科試験だが合格できる可能性が高い、と言えるのではないでしょうか。ホームページで各回次の入試実績のデータを公表する中学校が近年は多数存在します。複数年度分の実績を掲載している中学校もあります。これらを把握したうえで出願校を検討できることは特に1教科入試ではメリットと言えるでしょう。
「算数のみ」「算数1教科」入試のデメリットとは
・「算数1教科」試験の実施校自体が少ない
一般試験の中で算数1教科のみの試験を課す中学校は決して多くありません。おのずと選択肢が絞られるのは明確なデメリットといえるでしょう。(「英語1教科」試験にも同じことが言えます。コラムはこちら)また、この試験形態を採用している中学校から受験校を選ぼうとすると、試験日時が重複しているケースがよくあるのも注意するべき点です。たとえば、首都圏では2/1午後に算数1教科試験を実施している中学校が複数校あります。これらの中学校をこの試験形態で複数校受験することはできない、ということです。
・難易度が高く設定される可能性がある
もちろん、算数が得意な方が「英語1教科」入試を検討していることでしょう。しかしながら、その難易度が高く設定されることが珍しくありません。2~4教科試験の算数試験問題の出題内容よりもさらに高度な能力を求めてくることがよくあります。出題内容が高度化するだけでなく、試験時間に対して出題数がより多く設定されているケース、解答形式が記述型に重点が置かれているケース(=数的処理力だけでなく文章表現力まで問われる)など多様です。
さらに注意したいのが、算数検定や数学検定で小6よりも上位に相当する級を取得していたとしても、算数の試験問題で高得点できる確証にはならない点です。上述のとおり、私立中学校の算数試験は小学校の教育指導要領の範囲を超える内容の出題を中心的に扱うことが一般的です。一方で、算数検定や数学検定ではこれらのいわゆる「特殊算」に相当する内容を扱うことがほとんどありません。中学入試の算数試験で得点力を向上するには専門的なトレーニングが必要と言えます。
学習塾のアドバイスを受けることをお勧めします
このように、算数1教科入試にはメリットもありますが、一方で注意すべきデメリットもあります。中学受験を検討し始める時期や、それまでの学習状況や学習経験にも左右されますが、本当に算数1教科試験にターゲットを絞り込んで良いのか慎重に判断する必要がありそうです。
学習塾に相談することで、算数1教科入試で受験することを検討しているその中学校以外にも、お子さまやご家庭のご希望に合う中学校が見つかるかもしれません。また、算数1教科入試を受験することを確定するにしても、入試本番までの限られた時間をどのように活用して学習するべきか具体的な助言が受けられるはずです。
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